72万HIT記念イラスト
 

その人形は楽しそうに笑う。
少女のように。

「くすくすくす」
楽しそうに笑うヘレナを見て、マレはつい、と首を傾げた。
ここはダテンとクブツが主に管理をしている畑だ。
その中でも花畑にヘレナとマレはいた。
マレがここにいるのは、クブツに花の様子を見てきてほしいと頼まれたからだ。
特に何の変化もなかったら報告しなくても良い、とも。
見に来た花畑はこれと言って変化はなく――あるとしたら一人の少女が花畑に座っているぐらいであった。
こんなところで何をしているのだろう、とマレは思った。
ここは花畑である。ヘレナぐらいの年頃の少女であるならば、花畑で遊ぶことぐらい年相応と言えよう。
だが逆に言えば、ここは花畑、である。クブツとダテンが管理している花畑。
危険なものも多い花畑だ。マレはここで遊ぶことを禁じられているぐらいに。
ヘレナであればここで遊んでいても大丈夫なのだろうが……しかしマレには気になるところがあった。
「ふふ、ふふふ」
ヘレナは花を抱いて笑っていた、楽しそうに。たくさんの花を抱いて。
何故花を抱きしめて笑っているのだろうとマレは思ったのだった。
「ふふ、マレ。ねぇ、面白いわね」
ふいに、ヘレナがマレに声をかけた。
「ひゃ……い!」
先ほどまでまるでマレなどいないとでも言うかのように振る舞っていたのに、いきなり声をかけられて思わずマレは変な声を出してしまった。
「ふふ、驚かしてごめんなさいね」
ヘレナが花に顔をうずめたまますっと立ち上がる。
そのままマレの前へとてくてくと歩いてくる。
「ねぇ、マレ」
ヘレナはマレの前までくると、すっとその場に座り込んだ。
マレのいる場所もまた花畑の中である。ヘレナはその花畑に座ると、自分の傍をぽんぽんと手で叩いた。
どうやらマレに座れと言いたいようだ。
マレには特に断る理由もなく、ヘレナのそばにおずおずと座った。
マレが素直に座ったのを見て、ヘレナは満足そうに笑った。
「マレ、この花、何の花だと思う?」
唐突の質問。しかし答えられない質問でもなかった。
「……ひまわり、ですか?」
ヘレナが持っていたのは、黄色い花弁を持ち、中央にこげ茶色を持つ……誰がどう見てもひまわりであった。
これが少し難しい見た目のものだとしたらわからないだろうが、大体の人間が知っているだろう花だった。
何故そんな花の名前を聞くのだろう、そうマレが首を傾げたときだった。
「これはね、ひまわりではないのよ」
そんな、予想外の答えが返ってきたのは。
どう見ても、その花はひまわりだった。他のどの花にも似ていない。
けれどマレには知らないことはたくさんある。ならばこの花もその知らないことの一つなのだろうか。
「これはツギハギの花。まだ苗の頃に色々ツギハギした花なのよ」
そう言うと、ヘレナはマレに自身の持っている花を一本見せた。
マレはまじまじとその花を見る。が、しかしその花はツギハギした後など見られなかった。
「マレは接ぎ木って知っているかしら。トマトの枝にキュウリをさして両方とも楽しめるようにするの」
接ぎ木はマレもどこかで聞いたことがあった。うろ覚えでしかないが。
「これはね、そのもっと進んだモノ。根はコスモス、葉っぱはマーガレット、花弁はライオンフラワー、そして真ん中のこの部分がひまわり」
だからひまわりに見えたんでしょうね、とヘレナは付け加えて言った。
「凄い……ですね……。こんな…………そんなに足しても、花として成長できる……んですね」
実際、その花は一体何に分類されるのだろう。
コスモスとは遠くかけ離れている、マーガレットのように小さくない。だとしたら。
「だから面白いのよ、この花はなんなのかしら」
くすくすとまた楽しそうにヘレナが笑う。
そして薄目をあけて、マレをじっと見た。
「ねぇ、マレ。『私』は脳以外借り物だわ。でも『脳』が『私』だから『私』なの」
ならば、とヘレナが一呼吸を置く。
「花は何を持ってしてその『花』と言えるのかしら」
その花を花たらしめているもの……そんなもの、マレにはわからなかった。
「不思議ね、この花は確かに『花』なのに、何の花かはわからない」
幸せそうにヘレナは花に顔をうずめている。
まるで自身と似て非なるものを愛でるかのように。
「そうやって、私は私と似たようなものを作るのが好きなのよ」
あげるわ、と持っていた一輪の花を置いてヘレナはその場を立ち去って行った。
残されたマレはふと考えた。
何故ヘレナはそんなものを作るのが好きなのだろうかと。
そして何故、ヘレナは何の『花』かわからないものを自分と似ているものと言ったのかと。
考えて考えて考えて。

マレがその考えを止められたのは、晩ご飯に来ないマレを呼びにダテンがやってきたときだった。

end











72万HITありがとうございます!
72万お礼絵はヘレナです!
今回も厚塗りに挑戦。
そしてヘレナは目があることに気づいた・・・。
一番良く描けたのはお花だと思います!
ヘレナは良いお姉ちゃんなんですが、やっぱりzigorekishi組なので変です。
花は研究時代にヘレナのサンプルみたいな感じで研究されてた花をヘレナが育てている。
多分仲間みたいなものを感じちゃっているかもしれない。
攻撃能力がないため本編ではイマイチ活躍度は低いですが、
衣服とか小物とかそういう細かいことはヘレナが担当しているので、ぶっちゃけ内の仲間はヘレナ便りなところが結構あったり。
ちなみに私は花は根っこが脳にあたるんじゃないかなぁとか思ったりします。

画像よく見えないぜって人はこちらより小さい(すぎる)絵が見れます。
縮小するとやっぱり綺麗に見えるよね・・・。

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2014/04/02