73万HIT記念イラスト
 

「よぉ、何の用だ?怪我でもしたか」

無機物な音を立てて扉が開く。
その先にいたのは、この部屋の主人であるクブツであった。
この部屋はメディカルルームであってクブツの部屋ではない。
だがクブツがここの医療担当をしている以上この部屋の主人はクブツと言っても差し支えはないだろう。
「あ、あの、その」
先に声をかけられてしまい、言おうとしてしまったことが頭の中で霧散してしまったマレは戸惑った。
マレは別にこの部屋に忍び込んだわけでもなく、れっきとした理由があって入ったのだが何故かクブツの前では委縮してしまう。
「薬、を」
ようやく絞り出すように声をだす。
マレがこの部屋に来た理由はただ一つ、コロワに頼まれて風邪薬をとりにきただけだった。
「何の薬だ?何しろここにはたくさんあるからなぁ」
クブツがガチャリ、と棚の扉を開く。そこには大小様々な薬瓶が置いてあった。
一つ一つシールが貼られていたが、マレにはどれが何の薬なのかわからない。
こんなに数があるのにクブツは全部覚えているのだろうかと、ふとマレは思った。
「その、風邪、薬を」
「風邪薬か。誰のだ?」
誰の、と聞かれて一瞬マレはびくりと体が震える。何一つとして悪いコトなどしていないというのに。
そして同時に、一つの疑問も。
「あの……風邪薬って、どれでも……誰にでも…………一緒じゃ……」
用法容量さえ守ればどの風邪薬でも同じ。少なくともマレはそう思っていた。
だからクブツが誰のだと聞いたのが不思議に思えたのだ。
もしかしたらこれも健康管理の一つかもしれない、そう考えてマレがコロワの名前を告げようとしたときだった。
「お前さ、薬って何でも薬だと思ってるのか?」
クブツが、意地悪そうな顔をしてマレに笑って言ったのは。
「……?」
つい、とマレは首を傾げた。
薬は薬だ。それ以上でもそれ以下でもないだろう。効く効かないはともかく、薬は薬なんじゃないだろうか。
「薬……は、薬……では?」
疑問を口にする。マレにとって薬と言われたものは【薬】だった。
「はは……はははははははははっ!!」
マレの疑問を耳にして、クブツは突然笑い出した。
一瞬マレは驚いてその場に尻もちをつきそうになったが、何とか持ちこたえた。
「薬は薬か……っ面白いこと言うじゃねーか!」
クブツは笑い続ける。けれどマレには何故クブツが笑うのかわからなかった。
まるで馬鹿にされたみたいに感じて、マレはほんの少し眉をひそめた。
「ん?あー……悪い悪い。別にお前を馬鹿にしたわけじゃねーよ。ただな、マレ、良い事を教えといてやる」
マレのそういった気配を感じて、クブツが手を前にして謝る。その様子を見るに、本当にマレを馬鹿にしたわけではなさそうだった。
「あのな、マレ。薬は毒なんだよ、全ての生物にとってな」
毒。真逆の言葉を聞いてマレはまたもや首を傾げる。
確かに用法容量を守らなければ薬は毒になるが、それがどうしたというのだろうか。
「この世で本当の意味で薬なんてものは存在しないんだ。そんなのおかしいって顔してるな?」
クブツが棚から一つの薬瓶を取り出した。マレにはラベルに何て書いてあるかはわからない。
「これは抗癌剤。主に癌の治療に使われるやつな。これは薬か?」
「そう……じゃないんですか……?」
病気の治療に使われるならきっと薬だ。そう考えてマレは答えた。
「でもこれは体が衰弱するぞ?下手したら死ぬぞ?」
その答えに、冷たい答えをクブツは返した。
「これは毒だ。毒なんだ。たまたま色々な効果の一つが癌に唯一効果があるものだったから毒の作用と天秤にかけて仕方がないから使ってるだけなんだよ」
クブツが毒瓶を棚に戻す。
「薬と言うのはな、世の中の毒の効果を天秤にかけてデメリットの方が小さい物をそう言ってるだけなんだ」
「さっき見せた抗癌剤。アレはきつすぎでデメリットが大きすぎるがそれしかないから使うんだ、毒だとわかっててもな」
「だからな、マレ。この世に薬なんて存在しねぇんだよ」
な?と手を広げてクブツは笑った。
そうだった。事実そうだった。
良い物から良い物を選んでいるのではなく、悪い物から良い物を選んでいるだけだった。
マレはその答えに愕然とした。
「で、風邪薬は誰のなんだ?ここの奴らは個体個体で毒と薬が違うから、ヘレナ用の風邪薬をお前が飲んだりしたら大変なことになるぜ?」
最初の質問をクブツはもう一度マレに聞いた。
マレは大人しく口を開いてこう言った。
「コロワ、さんのです……」
果たしてコロワの風邪薬は自分にとって毒なのだろうか。
けれどマレにはそのことを聞く勇気はなかった。

end











73万HITありがとうございます!
73万お礼絵はクブツです!
zigorekishi組厚塗りシリーズです。
クブツは唯一ちゃんとした描き方(コロワとアプリケットは●)をして常時見えている(マレとエギスは隠れている)ので描き方に悩んだぜ・・・。
あと肌の色違う。
ちなみになんか見切れてたりするのは、クブツめっちゃでかく描きすぎたので他のと合わせるために縮小したんです・・・。
クブツは医療担当ですが、もちろん他の子達もある程度の医療知識はありますよ!
しかしクブツは独学とか教えてもらったりあと体自身が医療行為可能ということで担当。
本人は仕方ねーなーとか言いながら細かく健康チェック表とか作ってたりする案外面倒見が良い人。
というかzigorekishi組は何だかんだ言って皆面倒見が良いよ!
彼にとって一番楽なメディカルチェックはマレ。他はきっと色々面倒臭い。
アガラ&シガラ→体が弱ってたりするのでその辺注意。 BR> ヘレナ→抗体なかったりするのでその辺注意。
エギス→獣成分あるのでその辺注意。
ダテン→食用のものがあるので蓄積系注意。
アプリケット→胃改造とかその辺しているので注意。
コロワ→腕部分要注意。
ルニカ→もう色々と注意。

画像よく見えないぜって人はこちらより小さい(すぎる)絵が見れます。
縮小するとやっぱり綺麗に見えるよね・・・。

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2014/05/15