77万HIT記念イラスト
 


※宗教関連はあくまでキャラの考えであり、実際の宗教を批判するものではありません。

マレが目の前の扉を開くと、きらきらしたものが目に入った
「あ……」
薄暗い場所なのに、何故かぼんやりと光って見えるソレは、この場所ではとても神聖なモノに見えた。
この部屋は簡素で、狭い。
中にあるものと言えば、奥はただの壁であるステンドグラスと机ぐらいだ。
あとはそう、机の上に花瓶と花が飾ってある。
それだけの、簡素な部屋だった。
「あの……、ダテン、さん」
そんな部屋にマレが来た理由は一つで、この部屋の主を探しに来たのだった。
この部屋の主は普段は厨房にいる。けれどいないから探しに来たのだ。
自室にもいないので困っていたところ、ヘレナがならばあそこにいるだろうと教えてくれた場所だった。
「……マレさん?」
名前を呼ばれた部屋の主は、折っていた膝を立ち上がらせくるりと振り向いた。
きらきらと輝く髪を持つ、ダテンだった。
少女の容貌は絵で見る天使に近い。
なおかつ用途と材料は違うがその背に羽を背負っているところを見ると、見間違える人間も出るだろう。
ルニカは「だから羽を背負わされたんだよぉ?」とマレにいらないことを教えたが。
「どうしました?ここに来るなんて珍しいですね。誰かが呼んでいるのですか?」
ダテンはマレの姿を確認するとこちらにゆっくりと歩いてきた。
その造作には無駄はなく、洗練された動きだ。
マレは過去にダテンは上流階級の出身だと聞いたことを思い出した。
「えっと、その……ご飯の、時間で……」
呼び出されることが滅多にない少女が探され、呼ばれた理由。それは少女の役割が果たされていなかったからだ。
几帳面な彼女は毎食きちんとご飯を作っている。寝坊などしたことはない。
なのにそんな彼女がご飯の時間になってもご飯を作っていない、ということに一番マレは驚いた。
「え?あ……ごめんなさい。祈るのに夢中ですっかり……だめですね、時間はきちんと見ておかないと」
そう言って苦笑いをするダテンに、マレはここに来るまでに聞きたかったことを聞いてみることにした。
「……ダテンさん……は、どこの宗教、なのです……か?」
かぼそい声でマレがダテンに問う。
そう、マレは【大好きな料理を忘れるぐらいのこと】が知りたかった。
それがどうやら祭壇で何かに祈っているのを見て、どうやら熱心な信者なのだと感じたのだ。
ならばどこの宗教なのだろうか。キリスト、カソリック、イスラム、ヒンズー、仏教。
数はあるがダテンはロシア出身だ、だとしたら……。
マレがその幼い割に随分と働く頭を動かして思い出していると、ダテンが、ふっと笑った。
「私は宗教になど入っていませんよ」
「え?でも……神に…………祈って、たのでは……?」
予想外の言葉に、マレが動揺する。
確かにここにいる住人達は神なんて信じていないだろう。
自分達がこんな目にあっているのだ、同類しか信じない彼らにとって神は信じるものではない。
だがダテンは違った。何かに祈っていたのだ。
神に祈らず、何に祈っていたのだろうか。
「神なんて、いるわけないじゃないですか」
ゆっくりと、ダテンの目が開かれる。
冷たいような、温かいような眼差しがマレを射抜いた。
いつもはとても優しいダテンの、冷めた部分だった。
「ああ、訂正しますね。神はいるけどいないんですよ」
少し怯えた様子を見せたマレに、ダテンはいつものように優しく微笑む。
それでもマレはダテンの冷たい部分に触れたことで震えが止まらなかった。
「マレさん、きっと神というのは凄い力を持ったモノだと思うんです」
ダテンが喋り出す。まるで独り言のように。
「マレさんのその能力は、超能力を知らない人達にとっては神に等しい力です」
「だから神はそういう力を持っているモノを神と呼んでいるだけに過ぎないと思うんです」
「マレさんは人から頼られたら嬉しいと思いません?ありがとうと言われたら嬉しいですよね?」
「祈られた神もきっとそう思うと思うんです。だから頼られたらどうにかしようと考える」
「でもたくさんの人に頼られたからと言って全てを解決はしないでしょう」
「だってそこまで力があるわけじゃないんですから。だったらその優先順位はどうなるのでしょうか?」
「簡単です、神の気まぐれや神のお気に入りから順番に解決していきますよね」
「神をね、人と考えるととてもわかりやすいんですよ」
「宗教って、矛盾が多いでしょう?人を殺してはいけないのに、大義名分があれば殺すことも可能ですし」
「人を人非道に扱っていたこの研究所の職員だって、熱心な信者はいるんです」
「それを許すのは、どうでもいいからだと考えたら納得いかないですか?」
「天罰が下るのはたまたま目についたから、とかお気に入りだったから」
「ね、そう考えると全てを救う神なんているわけがないんですよ」
「だから私は神になんて祈りません」
そこまで一気に話すと、ダテンはふぅと息をついた。
「ご飯の時間、でした。下準備はしてあるので十分もあれば用意できますのでいきましょう、マレさん」
ダテンがマレの手をとって部屋を出る。
その手はとても暖かい、さっきまで冷めたことを言っていた人とは思えないくらいに。
「あの、ダテン……さん」
「……?なんでしょう?」
いつものように優しく笑うダテンを見て、マレは聞こうと思ったことを聞くのをやめた。
(ダテンさん……)
そのかわり、心の中でひっそりと問う。
(じゃあ貴女は……何に、祈ってるんですか)
口に出さぬ言葉が相手に伝わるわけもなく、マレの疑問は冷たい空気とともに掻き消えた。

end











77万HITありがとうございます!
77万お礼絵ダテンです!
zigorekishi組厚塗りシリーズです。
宗教関連はあくまでキャラの考えであり、実際の宗教を批判するものではありません。
また人の信仰を邪魔しようというものではありません。フィクションです。
そんなわけでダテンの神様論でした。
zigorekishi組は神を信じてませんがダテンは祈ってるぜ!という話です。
多分一番神を【信じていない】のはダテンだと思います。
でも比喩的な意味で自分の肉を食べてくれる人は神!とか思ってそうです。
ダテンが祈っていた部屋はダテンの部屋の一つ(彼らはここが自分の部屋!と主張すると自室扱いになります)です。
元々は研究員用の施設の一つ。小さいし祭壇あるしステンドグラスついてるしでダテンが貰い受けました。
ちなみに髪色としてなんかオレンジがかっていますが、ダテンの髪は白銀に近い薄い金色です。

画像よく見えないぜって人はこちらより小さい(すぎる)絵が見れます。
縮小するとやっぱり綺麗に見えるよね・・・。

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2015/02/14