粗筋
「包丁さんって知ってる?
呼び出したら誰でも殺せるんだって。
でも、そのかわり・・・・
呼び出した包丁さんは本当の名前を言わないと帰ってくれないんだって」
この町には昔から伝わる怖い話があった。
「包丁さん」という話。
包丁さん、というのはカミサマらしい。
神様じゃなくてカミサマ。
何か違いがあるらしいんだけど、昔話を語るおばあちゃんも何故かは知らない。
包丁さんはカミサマで、呼び出し方はとても簡単。
よくおばあちゃんに言われたものだ。
「悪いことすると包丁さんを呼ぶよ」と。
それで小さい子供である私達は怯えてすんなり言うことをきく良い子となった。
どこの地域にでもある、昔話。
それが、この学校にも存在する。
七不思議のひとつとして。
いや、正確には七不思議なんてもんじゃない。
包丁さんを知る住民がいる学校には必ず一つは入っている、包丁さんのうわさ。
昔話ででてくるカミサマが、子供達の怖い話の主人公として出てくるのだ。
外から来た子はその目新しい情報にどきどきしながら聞き、
ずっといる子は幼いころからの怖い話をもっと怖くした話を語る。
少しずつ違いはあるものの、大抵の包丁さんのうわさはこんなものだ。
「包丁さんは誰でも殺せる。だから憎いやつを呼び出したら殺してもらえる」
ほら、普通は「死ぬ」とか「呪われる」って言うけど、
包丁さんは「殺す」とはっきりしている。
だから余計に恐ろしく、怖く思えた。
けれど「殺す」ことを実行するのが「包丁さん」といういるんだかいないんだかわからないものだったから
普通の肝試しの感覚で包丁さんを呼び出す儀式をやっていた。
こっくりさんとか、そういうのみたいに。
だから、友達の一人が「これが本当の呼び出し方!」とか言っても、誰もが「ああ、またか」と思って。
ほんの、軽い気持ちでその呼び出す儀式をしてしまった。
それが、どうしようもないほどの恐怖を生み出すとは知らずに。